付き合いの長いYさんご夫妻。引越をする度にリフォームのお話を頂き、今回で3回目のリフォームです。だからYさんの感性や感覚も解っているから話は早い。やりたい事とご予算をお聞きしたらサッサとプランを始めます。

新築マンションだから個室や水周りは既存のまま。LDKと玄関廊下の珪藻土仕上げとキッチンの再構成。そしてメインはオープン書斎の計画です。
自宅で仕事をされているダンナさまの書斎を作るのですが、このダンナは個室にこもって仕事ができない。リビングじゃないと集中できないさびしんぼなのだ。前回のお部屋をリフォームした時も個室は書庫にして、わざわざ狭いリビングの隅っこにデスクを置いて仕事をしていたのだ(笑)じゃあ今回はリビングも広いからド〜ンと作りましょう。

リビング隅のサービスルーム(引き戸を閉めれば個室になる普段はオープンな空間)の引き戸や間仕切りを撤去してリビング空間を広げます。そこにPCや資料をたくさん置けて、仕事の打ち合わせもできる1.5m角のテーブルと大きな本棚を造作。それらにAV収納を絡めて書斎とリビングとの融合を狙います。
光あふれる開放的な書斎は、機能と意匠と用途のあいまいな線引きから生まれた開かれた空間です。

現調に伺った時、まず目に飛び込んできたのはとってもカッコ悪いキッチンでした。この部屋を買ったYさん自身もカッコ悪いと言っている・・。あの〜スタジオダックスがなんとかしてくれる前提で部屋を買わないでほしいんだけど(汗)
長年愛用しているパインの家具達が生きる白くシンプルなダイニング。そして問題のキッチンもなんとかしますよ・・。

グレードの高いシステムキッチン。ステンレスフードに石貼り。素材は高級だけど、そこにデザインとディテールは存在しません。キッチンとしての機能をまったく考えていない上に見た目もお粗末な大手デベロッパー分譲マンションの典型だ。どうして手が届かない高い位置に収納を設定するのか?なんでそんな目線より上にこんな圧迫感のある濃い茶色をもってくるか?
意味がわからん・・。石の使い方もとっても幼稚だ。

見た目はお粗末でもグレードの高いキッチン。だからそれを利用して意匠と機能の再構成をしていきましょう。吊り戸棚はコンパクトでシンプルに。調理部は既存をそのまま利用し、シンク部カウンターをモザイクタイルトップに変更。それだけでこんなに明るいキッチンになります。ただし、「それだけ」を実現する為に実はかなり手の込んだ事をやっているのだ。既存キッチンの再構成はとってもムツカシイ。

玄関と廊下は床も建具も既存のままで壁と天井に珪藻土を塗っただけなんだけど、空間のグレードを上げるちょっとしたテクニックが潜んでいます。それは巾木(床と壁の見切り材)を撤去した事。もともと建具と同じ色の濃い茶色の巾木が付いていて厚化粧でした。それをナチュラルメイクにしただけ。床が石やタイルなど堅い素材の場合は効果のある手法ですよ。

大きなワンルームにリビングとダイニングキッチン、そしてオープン書斎があいまいかつ程よい間合いで共存します。私的には理想のホームオフィスの構成だ。素材やテイストは違うとしても「スタジオダックスの将来のオフィス」をイメージしたらこんな感じに仕上がりました。

(おわり)

場所:東京都世田谷区/新築分譲マンション4階部分
規模:約49平米部分リフォーム(LDK、廊下、玄関)
床:既存フローリング、既存石タイルのまま
壁:珪藻土(建具は既存のまま)
天井:珪藻土(照明、空調は既存のまま)
その他:既存キッチン利用、一部モザイクタイル貼り
キッチン吊り戸棚交換
書斎テーブル造作
書斎本棚造作
リビングAV収納造作
縦型ブラインド施工
ウッドデッキ施工

設計・施工:スタジオダックス
Photo:SIGMA SD14/10-20mm EX DC